例によって(参照)借りたラノベを読んでいる。現在読んでいるのは「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」。以前なにかで少し読んだことはあったが最後まで見たことはなかった。
友人曰く、最終巻においては最初期からは考えられないインフレを起こしているようで、ネタバレにならない一文だけを見せてもらったのだが確かに意味がわからなかった。そういうわけで気になってしまい、我ながら興味津々でどんどん読み進めている。ちなみに件の友人はロクアカ全巻24冊中23冊のみを貸してきたので、俺は最終巻を買わざるを得ない。うまいことやられてしまった。
ところで、ロクアカの世界設定はかなり凝っていて良い。魔術そのものの設定もさることながら、国家の行政機構や派閥争い、世界情勢ひいては世界そのものに対する歴史もかなり作り込まれている印象を感じる。インスピレーションの元になりそうなので、せっかくなので気に入った設定をメモしていく。
魔術まわり
詠唱システム
ロクアカ世界観における魔術の中でも、メインとなるのは詠唱によって発動される魔術である。この詠唱にはいくつかのパラメータが存在している(「速度」「音程」「テンション」「初期マナ・バイオリズム」、「節」もその一つかもしれない)。詠唱は人によって節を切り詰めて短くすることもできるようだが、それはその人のスペックが高くないと無理ということらしい。
なんかプログラミング言語っぽい気がしてくる。ハイレベルな人であればprint()
を呼べばいいものを、そうでないならアセンブリ言語で長々と複雑な呪文を詠唱する必要がある、という感じに見える。レベルという例えも、高レベル・低レベルというIT関連の用語とちょっと被っていて(偶然だろうが)いい感じ。
魔法・魔術の設定に凝ろうとすると、神や精霊などの超越的な力を実行する実体を突き詰めるか、拡張された物理法則として突き詰めるかの二択になると思う。後者の法則・再現性のある魔術というのは実質的には科学に変わりない。そして、さらに突き詰めていけばそれはプログラミングに近いものになってくるように思う。この作品に置ける魔術はほぼ完全にプログラミング化していて興味深い。
細かい単語類
本筋には関係無さそうな部分で思い切り設定を盛っていけるのはとても良いことである。一巻だけでシスティーナがかなりいろいろ興味深い話をしていた。「マナ密度」「エクステンション限界」「マナの冬」「マナ半減期」「表意系古代語」「紋章象徴学(紋章学は実在するっぽい)」「テレックスの神話分解論」というワードを並べ立てられるのは、システィーナの考古学オタクっぷりを表すための一度しか登場しない表現だとしてもおもしろい。魔術とは科学であるという世界観を強化する単語群だと思う。というか、こうして見ると考古学とは理系文系の混在するフィールドなんだなあ
産業の発達具合
この世界では蒸気機関車が実用化されていて、しっかり産業革命が起きている感じがある。魔術を行使できる人はかなり少なく、世間に一般的な技術として膾炙していないゆえに、科学が正常な発達を見せているのかもしれない。一方で戦場においては魔術は非常に重要で、既存のどの武器をも凌駕している。一巻で「魔術は人殺しに役立つ」とグレンが言っていたが、その背景をより一層際立たせる設定が垣間見える。なんなら街灯もちゃんとオイル灯であって魔術で光っているとかではなかった。魔術はインフラにはならないらしい。
アルカナ、セフィロト周り
本のテーマが厨二病的なので何も気にしてなかったけどまさかの滅びた地球から逃げてきた魔術師がこの世界に魔術を持ち込んだからという理由でびっくりしてしまった。伏線がうますぎる
国家の統合
地政学的には隣り合っている国家は対立するというプリンシパルがあるので、全部解決して対立の理由がなくなったら即統合されてたのはベタ展開だけど順当だなーと思った
所感
魔法って科学なんすよ!をベース思想に異世界モノ小説を書いたことがあった。純粋な物理現象として素粒子レベルで別のモノを作ってみたけど結局魔法としてのインパクトは若干弱いし派手なことをやるにはマジで頭脳戦レベルの話が書ける脳が要る。
そういう方向性のラノベもぜひ出てきてくれ~もうあるかな